WINCARS KURUMAYA KOZO
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Konaさんくるまよもやま話
18.ヨットの話
風で走るヨットには小さなディンギーのタイプと、エンジンや居室の付いているクルーザータイプがあり
海上にすぐバタンと倒れてしまうディンギーは車で言えばバイクで、クルーザータイプは四輪と言っていいかもしれません。
セーリングクルーザーもぼくが子どものころは今では考えられない全長五メートルくらいのがあって
元安川に浮かぶそれを見てはうらやましく思っていました。
六メートルくらいは普通の大きさ、二十五フィート(七、五メートル)は豪艇だと思っていた。
今はどんな大きさも消費税五パーセントですが、そのころ二十五フィート艇まで物品税が確か十パーセント
二十五フィート以上は三十パーセント(!)だったように思います。
二十五フィート以上のボートヨットは車なら3ナンバーだったんですね。
自動車も高価だったけれど、ヨットはそれ以上でした。
ましてそのころ三十フィートは大型艇で、三十年前でも知人の三十フィートヨットに乗っていたら
「大きいですね」と言われ周囲の羨望の的でした。
海外の雑誌を見ると欧米では三十フィートも「スモール」なのでホンマかいなと思った。
日本で超大型の四十フィートは欧米ではミドルサイズで日本にはほとんど見かけない大きさでした。
今では観音マリーナでも吉島のボートパークでも廿日市でも四十フィートのヨットはふつうに居ます。
多いのはフランスの「ベネトー」や「ジャヌー」。
世界中に多くのヨットビルダーがあり、ドイツにはデヘラーやハンゼなど多くのブランドがあり
北欧にも多い。モダンなフランスのヨットに比べ、ドイツのは車と同じようにカッチリとしてやや保守的です。
メルセデスのCLクラスやベントレーに当たるのはどれかといわれれば
アメリカのヒンクリーやフィンランドのスワン、イギリスのオイスターでしょうか。
手造り感たっぷりの高価な船を造るビルダーでクラシックですが
とくにヒンクリーはアメリカのメイン州のイメージでトラッドです。
トラッドなビルダーが北欧に多いのは、北欧、ドイツ、オランダ、イギリスに海洋文化があるからで
フランスも南仏より北フランスにその文化がある。
北海沿岸のフランス人は北欧系なんです。南仏のヨットはリゾートスタイルですが
北フランスは伝統文化のヨットやボートです。
ノルマンディーのオンフルー、ブルターニュのサンマロやラ・ロシェルなどに行けば
海上に浮かぶおびただしい数のボートヨットの伝統のスタイルで分かります。
海洋系の文化とリゾート系の文化が共存する国がフランスです。
日本は江戸時代に鎖国をしていたので海洋系も船のリゾート系文化(ソフト)もないが
日本海と東海沖を無数の千石船が疾走していた島国で、じつは船そのもの(ハード)の文化は存在しました。
それで明治以降日本海軍の急発展もあったのですが、第二次大戦後は「海軍」の封印でフネの文化も意識されなくなりました。
ヨットボートの日本国内のビルダーもたくさんありましたが、自動車と違いブランドに成長するよりも前に廃れ
今は日本製のメリットはあまりありません。日本の自動車業界の未来はどうでしょう。
何年か前、海外のヨット雑誌を見ていて仰天したのはウオーリーというヨットの写真でした。
新興のビルダーでモナコに本社があるらしい。一見して何億、何十億円しそうなメガヨットばかりで新興ビルダーなのに
王侯貴族の雰囲気が漂っている。何に驚いたかというとシュールなくらい現代のデザイン、超シンプルだということ。
そのことはぼくの趣味嗜好でもある。
超高価なはずのウオーリーのヨットは見た目にはラグジュアリではない。
デッキはフラッシュ(平滑)で何もなく、たとえ百フィート(三十メートル)でもシングルハンド(ひとり操作)
ダブルハンド(二人操作)で走れるハイテクのあるはずなのに何の装置も見えない。
船尾のコクピットにも豪華なシートのようなものもテーブルも見えない。
必要なものは必要なときにボタン一つでポップアップするシステムなんでしょう。
写真で見ると巨大なセールとコクピットに小さめの二つのステアリングホイールだけ
ただひとりの男が立ち、巨大なフネを洋上一直線に飛ばしてゆく。
wallyで検索すれば簡単に画像など見ることできます。
八十フィート艇には「ryokan」という名のヨットも居ますが、「旅館」のことだと思います。
百フィート以上のメガヨットにウオーリーの素性がとくに表れている。
ウオーリーのヨットはたぶんまだ日本に入っていないと思う。
乗らなくてもいいから死ぬまでに実艇を見てみたいフネです。
乗らなくてもいいからと書いたが、死ぬまでにデッキに立ってみるという夢も残しておきます。
ウオーリーのヨットに思うのは真のラグジュアリということで、つまり突き抜けた仙境
ヴァカンス、禅定のフネということです。
そんなコンセプトの自動車は存在しないと思う。ラージでスマートでノーブル、シンプルな車は思い当たらない。
そしてボートは自動車と違い、場合によっては漂流する住居でありイベントの舞台でもあるのです。
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