WINCARS KURUMAYA KOZO
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ポルシェをじつはまったく運転したことがないんです。
ボクスターが二座オープンの車で、ポルシェのスポーツカーの中では乗りやすい車であることくらいは知っています。
小さなドアから二座オープンらしいすこし窮屈な姿勢で乗り込むと
着座は意外に高くワーゲンゴルフのカブリオレに乗った気がしました。
ストロークのあるクラッチを繋いで軽くアクセルにタッチしたらエンストした。
無造作にクラッチの操作をしてはいけないのだと気づいてむかし乗っていた309GTIを思い出しましたが
クラッチの重さも繋ぐ難しさもGTIはこんなものではなかった。
ほかのポルシェのスポーツカーがどうなのかは知らないが、すぐに馴れてだれにでも乗れるボクスターはほぼファミリーカーです。
ハンドルは小さくてタイトでわたし好み。
マニュアル2速走行の逆ジェットコースターのヒルクライムはもちろん楽しい。
急カーブではエンジンが後ろにあることを思い出させるカートのような挙動も感じておもちゃのような楽しさもある。
エギゾーストの音も良い。けれど初めて運転した感想は「ポルシェはワーゲンだ」ということでした。
水平対向六気筒だからスムーズな吹き上がりは当たり前で、ノンターボとは思えない重厚な噴き上がりです。
パトカーが居ないのをミラーで絶えず確めながら速いのは速いですが、力任せにグーッと突進する感じ。
ヒルクライムのコーナリングも力任せ。パワーは違うが妻ノン用ワーゲンルポを思い出した。
排気サウンドもルポを思い出せたので、逆に言えばワーゲン兄弟末っ子のルポはただならない車なのかもしれない。
「軍用車みたい」と思わずSくんに言った。
それが言いすぎなら第二次大戦の戦闘機に乗った感じってこんなではなかったかと思う。
または地を這う車の操作のおもしろさはあるのですが、繊細さ、突き抜けた歓喜はなくてオーソドックスな印象でした。
むかし乗っていた309GTI初期型はこれに比べると過激だった。
まったく低速はなく、走り出したら狂ったように回るエンジンと、粘りつく足と超曲がるステア。
大阪の名料亭の息子さんが乗っていたルノーアルピーヌとサンクターボも過激だった。
そのハンドルを手にしたことはないが、助手席に居てもアルピーヌとサンクターボの近未来的
ばかばかしいくらいの過激さがようく分かったものです。
ボクスターには異次元感覚とサトリの境地はない。
車にサトリが要るのかと言われそうですが、スポーツカーの行き着くところはそれしかないでしょう。
でもボクスターは長く乗ればしみじみいい車だなあと思うようになる車だと思う。
それがドイツ車ではないかと。
それで思い出すのは車屋コーゾーさんに試乗してくださいと言われてずいぶん前に運転した
アウディTTマニュアル6速で、ちょっと欲しいと思ったくらい良かった。
ワーゲンと親戚なのにワーゲンとは違うシティ派の過激さがあった。
フレンチの面妖禅定の過激さではなく、ターボ感満載の正統な過激です。
ペダル類のタッチもブレーキの利きもハンドリングも洗練されていました。
でも戦闘機で軍用車のようなボクスターにはしみじみ古典の味わい、アナログなよさがあったなあと思う。
決して女っぽくはないので禁欲的な車かもしれないが、車を数台持っていいならあっていいかもしれない車かもと思うんです。
速い車が好きなのにエグザンティア以来スポーティーな車を持っていない。速い車に乗りたくなった。
トヨタのプリウスを運転してみたいと思っていました。
ほんとうにエコカーなのかすこし不審で、しかし運転したこともないので評価する資格がない。
タクシーなどで客として乗ったことがあるだけだから、いちど運転してみたいと思っていました。
パソコン世代の中学生の娘はタクシーで乗るプリウスの液晶表示をおもしろがる。
そういう演出は得意そうな車に思えました。
プリウスを運転してみたいと無性に思ったころ、機会はあっさりと訪れました。
Sくんのボクスターを運転させてもらったあと、ポルシェのサーヴィスに修理に行くとSくんが言った。
駐車場でほかの車に当てられてボディーをすこし擦りむいたそうで、持ち込んだディーラーの代車が
真新しいプリウスでした。
ドライバーズシートに座った印象は予想外によかった。
わざとらしさが見えず、液晶画面やデジタルのセンターメーターもハイブリッドの先入観では違和感がない。
すっきりと良い意味で近未来的。小さめの異形のステアリングもわたし好み。
小さなシフトノブ(というよりスイッチ)など操作性の悪さも気にならない。
若干のアバンギャルドはシトロエン的で、車内のデザインはわたしのシトロエンよりよくできている。
いま乗ったばかりのボクスターとあまりに対照的。
走り始めた印象も予期したよりよいという印象でした。
重く鈍いのではと思っていた挙動のだるさはなく軽く走る。
発進はすこし重いが中速の伸びはあるからコンチネンタルな設定。
淡々とした足回りもどちらかといえばフレンチで、走りも内装もひょっとしたら
シトロエンに通じるものがあるのではと感じる。
ただし乗り心地に予想外なぴょこぴょこ感はあって、コーナリングも若干のイヤイヤ感がある。
しかしそうやって街を走りすこしヒルクライムをしても悪い印象はなく
売れている車は良い車なのだと、普通に走るなら良い車ではないかと思って降りて
Sにさよならを言い、わたしのシトロエンC5に乗り換えたとたん――
「今乗っていた車はなんだったんだ!」という衝撃に襲われた(おおげさな表現のようですが、そのときはほんとうに)。
プリウスを運転しているときはよくできた車だと思っていたのに
C5というほんもののシトロエンでフツーにまっとうな車と比べてしまうと。
C5はC5という塊で、すべてひとつのエンジンで稼動している一体感があります。
プリウスの挙動はジグソーパズルのようで思い出すとしっくりしなかった。
それを専門的にどう分析表現していいか分からないのですが。
「思ったより走る」、「思ったよりは曲がる」、「思ったよりは足がしっかりしている」という印象が
ひとつの車にまとまっていない。靴の上から足をかくような気分。
割り切ってなにかを犠牲にすればよいのでしょうが、燃費の数字を狙いすぎているのかもしれない。
ホンダがハイブリッドを発売したときは二座クーペでした。
セダンの今もエンジンメインで電気はアシストに使うシステムのようです。
燃費を売りにしていない。それを中途半端なハイブリッドと思う人もあるかもしれないが
それはそれで見識ではないでしょうか。
ただしホンダのインサイトは遠目にはプリウスにしか見えない形で
この見識のなさはいったいなんなのかと思う。トヨタが築いたハイブリッドのイメージを後追いしているだけでしょう。
若いころは良い車とは体の一部になり意のままになる車だと思っていた。
ハンドルを握って四十年、このごろ良い車とはわたしを勝手に運んで行ってくれる車だと思う。
じっさいは運転にすごく集中しているのですが敷かれたレールの上を滑るように高速で行く感覚の車。
その意味でエグザンティアもC5も理想なんです。
その意味ではプリウスは単体ではよく走るが、わたしを列車のように運んでくれるわけではない。
わたしを残して勝手に行ってしまうという印象でしょうか。
ポルシェのディーラーに真っ白に輝く
リムジンのように壮大豪華な「パナメーラ」が鎮座していてハイブリッドの表示があった。
ゴーンさんのニッサンもBMWもハイブリッドを採用する時代で、ポルシェが採用してもおかしくはないが
どんなふうに出来上がっているのか若干の興味はあります。トヨタ、ホンダと一線を画しているのではと想定して。