WINCARS KURUMAYA KOZO
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妻ノンと車で走っているとき彼女が、「この一年間で、わたしのいちばん大きなできごとは何だったか?」と言った。
彼女は性格がアーチストで並の人とは違う激しさで生きているからいろんなことがあり
その濃密な中からいったいなんだろうと思ったら「車の運転を始めたこと」と言ったので
じつに予想外な答えだったが納得はした。
「なるほどね!」
人類の発明してきたもので最も偉大なものを一つだけ上げろと言われたらぼくは自動車だと言う。
数万、数千年来人間はじつにいろんなものを発明し、最近ではデジタル系の通信機器が人類誕生以来の情報革命を起こしている。
しかしそんなことよりなにより人間の体そのものを遠方にすばやく移動させて空間と時間を征服したのが根本で
その道具は船と飛行機と鉄道だった。しかしどこにでも行ける自由をもたらしたのは自動車。
人間にとって必要な根本が「自由」なら、自動車は理の有も無も言わせずそれをぼくらに与えてくれた。
ノンは言う。「ひとりでどこにでも行ける気ままさが大きい。
不慣れな運転でわたしが事故を起こすのが心配だったんでしょう? 自分でも不思議に事故がなく
これほど運転がおもしろいとは予想しなかった。
自由に飛ばして走れるとは思わなかった。
人生の一大発見。
ひとりで行きたいところに行けば不満も解消されるし、精神的に解放されたのも大きい」
そのとおり!
そう思ってぼくは二十数年ペーパードライバーだったノンに車の運転を薦め、ノン用のクルマを買ったのだった。
ぼくとノンはこれまで市街中心部のマンション住まいが多く、どこにでも自転車で行けると喜んでいたが
実用面のみでも大きな買い物をしようとすると郊外の大型店に行かねばならない時代で、車がなければどうにもならない。
精神面ではそれ以上のものがあります。
女でも男でも、ぼくの知人には口数も少なくおとなしい人、あるいは根からの紳士淑女で
クルマの運転では飛ばして過激な一面を見せて驚くことがある。
意外に見えてもふだんから真剣に生きている人たちではあるので納得は行く。
ぼんやり「天然」の性格の人が、車の運転になると真剣に飛ばすのは「天然」の向こうに本物の人生があるということです。
今は郊外地に住んでいるのですが、郊外の道路を行くとハエの止まりそうなくらいノロノロ走る女の人の車が多い。
信号が青のうちにさっさと行けばいいのに逆に速度を落としてわざわざ赤で止まるなど
安全運転でいいじゃないかと言うかもしれませんが、周囲に事故を誘発するのはそんな車です。
このような運転の車は海外ではあまり見かけないので、世界一厳しい運転免許証を持っているのに
自身無げに公道を走る日本に特有の女のドライバーの精神的心理的背景はどうなんだと考えてヒントになることに思い当たった。
バリバリに仕事をしている女の人はオフ日のプライベートな運転も気合の入った運転で飛ばす人が多い。
もうひとつのヒントはぼくの周囲の女の人で、みんな運転が巧みだということです。
(1)仕事を持つ女の人は気合が入っている。
(2)ぼくの周囲の女の人は気合が入っている⇒⇒⇒気合の入った人生の人は運転が上手くて飛ばす、という事実です。
運転のうまい女の人に共通するのはみんな「人生」を生きているということ。
男はといえば、もともと日々仕事に追われストレスにさいなまれながらもギンギンに生きているから車の運転も気合が入る。
リタイアした高齢者もなにかしら自分の人生を生きている人は車を飛ばすが
残りの人生をささやかな趣味に生きてぼんやりと過ごすような人は、よくトロトロと走っています。
そしてそんな車に限って強引な車線変更をしたり、後続車に構わず平気でUターンする。
若い男は本性的にテンション高く、死ぬほど車を飛ばすというイメージがぼくにはあるのですが
このごろトロトロ運転をする若い男をときおり見てびっくりすることもある。
フリーターか何か、気ままな日々で人との絡みも少なく、さらにセックスはなしという草食系かもしれない。
女の人にしても高齢者も草食系若者も、トロトロ運転の人たちはほかの国にはあまり居ないタイプです。
どうして日本だけそうかといえば、それが可能な社会だからでしょう。
穏やかに勝手気ままに過ごすことができてそれでなんとも言われない社会だからだろうと思う。
必死に生きなくてもよい社会です。
日本製の自動車はそんな社会を反映して出来ているようにも見える。
ほかの国では生きることじたいがだいたいにおいて大変。
治安そのものが日本ほどではない社会が多く、気の抜けない日常生活。
自己アピールも必要で、欧米のご婦人方は死ぬまで女を意識し夫や恋人に嫌われないように
老いてもセクシーな衣服と女の魅力の研究におこたりなく、男は六十になっても七十になっても
すきあらば若い女と仲良くしようとする。
まあそういうことだけではなくて、ふだんの嗜好でも仕事でも生き方として真剣。
日本ではそうではないボンヤリの人が、とくにオバサンと呼ばれる人たちに多いので
その違いがどこから出るのか分かりませんが。
思い当たるひとつのヒントは沖縄の人の車の走りです。
沖縄の人に失礼になるが、沖縄のドライバーには老若男女、なにを考えて走っているのか
どうしようとしているのか分からない車が多い。
周囲を読まず、勝手気ままにのんびり走っている。
島なので先を急ぐ必要がないとも言えますが、濃密な人生の人は一キロ先に行くときも気合の入った運転で行く。
沖縄のドライバーの心理を解明すると日本人が分かるかもしれない。
関東と関西を比べると関西のほうが気合が入っています。京都は古い町で通りも狭いのに
どの車も飛ばしてスムーズに流れている。ぼくは京都市街を車で走るのは好きです。
関西人が東京に行くと東京のぼんやりとした車の流れに首をかしげることが多い。
そういえば東京の人は店の前に平気で長い列を作ります。
広島も車の流れはシャープで、郊外や田舎はぼんやり車も多いが
市街はヨーロッパの町のようにびゅんびゅん流れてゆきます。
ただそれだけの理由で住むなら広島は悪くないと思うことがぼくにはあるくらいです。