WINCARS KURUMAYA KOZO
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今日は建築について書いてみます。
船、とくに外国航路の客船(今ならクルーズ船)は、その国の文化と工業レベルを象徴する
巨大な総合工業製品であると言われていました。
鋼鉄やハイテク素材で組み上げる船体やエンジンなどの機械類もさることながら
内外装やアコモデーション(日常の設備)の質も問われる海に浮かぶ巨大なビルで建築物だからです。
その意味で、自動車も小さな船で総合工業製品。
ただ走ればよいと言うものではない。
車の話に建築を書きたくなったきっかけは最後に触れますが
どうやらぼくは若いころから無意識のうちに建築に関心があったらしいと、この歳になって気づいたんです。
建築を見に遠くに出かけることがあり、建築の本もずいぶん読んだ。
どうして建築に気が向くようになったのか、思い返すと生まれた家の目の前に
むかしの日本では考えられなかった豪勢な建築群があって、それを見ながら育ったからでしょうか。
江田島の(旧)海軍兵学校。子どものころは米軍の住宅地以外の主な建築はすべて明治と大正と昭和前期のものでした。
どれも東京千代田区なみの国の建築で、庭園のような敷地に点在するのでは千代田区以上です。
北イタリアのコモ湖周辺がぼくは好きといつか書きましたが、そのリゾートにすこし似ているのです。
今もすべてのオリジナル建築がぴかぴかに現役で、重要文化財クラスですが
「軍事」施設で国有ですから文化財にはしていません。
コモ湖周辺でセレブの集まる名車のイベントが行われるように、アメリカの「海軍兵学校」で有名な
ボートヨットショーが行われるように、江田島の「兵学校」の庭園でもフェラーリやベントレーのイベントなどあれば
すばらしいと思うが、日本の防衛省では間違ってもありえないでしょう。
建築の世界で広島は興味深いところです。
戦後の建築で国の重要文化財になったものはただ二つしかありませんが、ふたつとも広島市にあります。
丹下健三の「原爆資料館」と村野藤吾の「世界平和記念聖堂」(幟町教会)。
長谷川暁という建築評論家は原爆資料館を「牡の建築」、記念聖堂を「牝の建築」と呼んで建築界では有名な話です。
戦後の日本建築史上重要で対照的な二つが、広島にある。すごい。
じつは広島は専門家の間では「広島詣(もう)で」と言って修学旅行に値する有名な都市なのです。
最近の建物では福島町の西消防署が「ブルータス・カーサ」的にも有名。
もっと有名になってもよいのは吉島の中環境局(ごみ処理場)で
世界にアピールしていいくらい立派で優れていて、シーフロントの環境も突出した建物。
近くの平和公園を訪れる海外の観光客や修学旅行生の十人にひとりでも来ればよいのに市が国内外にアピールしないのが不思議。
近郊では厳島神社も岩国の錦帯橋もユニークな建築で歴史的に重要なものですし
広島市内では牛田の不動院は江戸期より前の禅宗金堂(今は真言宗です)としては京都にも鎌倉にもないもので「国宝」。
広島市民も忘れていますが、韓国や中国なら世界遺産にしているくらいのもの。
同時期の禅宗金堂は各地に数か所残っていますが、壮大さで不動院のものが唯一無二。
ちなみに規模は小さいがもっと古い(鎌倉期)のものが山口の長府にあってすばらしく、これも国宝。
広島市内出汐町に原爆に耐えて残る旧陸軍被服支廠(軍服の工場)の壮大な赤レンガ建築も希少なものです。
原爆ドームが大きく壊れたのは鉄筋コンクリートに見せかけたレンガ造りだったからですが
被服支廠は逆に鉄筋コンクリート造りに赤レンガを貼った頑丈な建物。
残念ながら軍事遺産ということで無視され、壊すに壊せず隠しているのではと思うくらい。
安佐南区に交通博物館というハコモノがありますが、出汐町の赤レンガを横浜ミナトミライのように改装して
しゃれた交通博物館にすればぴったりだったんです。
それにしてもあの交通博物館は自動車の町、ヒロシマにしてはひどいですね。
ヨーロッパやイスラムの国々やアフリカで日本の都市を聞くと東京の次に出る名前は必ず広島です。
京都や大阪を知らなくてもヒロシマはみんな知っている。東京の名も知らなくて広島を知る人も居るくらい。
そして原爆のヒロシマはマツダで再興し発展したと海外の人は考えている。
一部は真実かもしれません。
それくらい「自動車の町ヒロシマ」なのに市もマツダもそのことに関し何にもしていません。恥ずかしいくらい。
広島にはユニークな建築も多く、比治山に戦後すぐ建ったABCCも貴重な建物ですが
これもメディアに取り上げられることがない。
「基町クレド」もじつは商業施設としては東京にもどこにもない今ではできないだろうと思うくらい品格のあるものです。
六本木のミッドタウンなどより建築としてはよほど優れています。
となりのひろしま美術館も。上八丁堀の「アーバン」の白いタワーマンションも
あれほど手間をかけて作られた民間のマンションはほかの都市では考えられません。
それから袋町のファッションストリートに面した袋町小学校のユニークさ
。
ぼくは日本でいちばん立派な小学校だと思い、その門前に行くたびミラノの宮殿を思い出す。
現代の宮殿ですね。
袋町小は広島市立ですが児童の半数はじつは区外で、付近に店や事務所を持つ人の子が多い。
午後になると独逸、伊太利亜車が門前に着いてこどもたちを迎えに来る光景が見られ、絵になります。
そんな広島の建築環境ですが、これが先進国かと言う、のけぞるほど無品格でつまらない建築もたくさんあります。
広島県の免許センターが典型です。
市民にとって重要な行政施設をあんな山の上に移転したこと自体、広島県民の半数以上を占める免許所有者を
愚弄しているとしか思えませんが(だれも問題にしなかったのが不思議)、敷地だけはたっぷりの場所なので
着いたらモダンで優雅な建物に迎えられるならまだしも、中国の辺境の町にそびえているようなゾッとするビル。
これは警察行政の利権に属するのでしょうが、行くたびにとんでもないところだと思うのです。
免許の書き換えや講習などは区役所や区民センターに委託でいいんじゃないでしょうか。
言いたいのは日本で七千万人の自動車免許所有者の権利(利権ではなく)ということですね。