WINCARS KURUMAYA KOZO
〒730-0847
広島市中区舟入南4丁目8-14
TEL:(082)232-5200
FAX:(082)232-5199
2ストロークエンジンのこと
イギリスには産業革命前からたくさんの炭鉱がありました。
漏出する地下水をポンプで汲み上げましたが、その動力は水力、風力、人力でした。
ポンプの筒の中にはピストンがあってバルブ(弁)があります。
水の代わりに蒸気を送り込めばポンプとは逆に
ピストンが動いて動力になるのではないかと考えるのはじつに自然な発想で蒸気機関が発明されて
それでポンプを動かすようになりました。
しかし蒸気機関はボイラーが要るので乗り物の動力にしようとすると船や機関車のような大きなものにしか積めません。
筒(シリンダー)の中に蒸気でなく燃料を吹き込んで燃焼させれば
ボイラーが要らず小型で効率もすこぶるよい機関ができると考えられたのがガソリンエンジンで
それが自動車の発展につながりました。
ガソリンは高電圧のスパークで爆発させますが
シリンダー内を超高圧縮にすれば電気なしの少ない燃料でも爆発すると考えたのがディーゼルです。
システム上ガソリンエンジンより効率がよい。高圧にするために工作精度が求められますが
町工場でも作れるように低圧縮のままディーゼルのようにしたものが焼玉(ホットバルブ)エンジン。
欧米ではセミディーゼルとも言います。
昔は船に多かったのですが、低圧の分、効率が悪いのでディーゼルの普及で消えてなくなりました。
エンジンにとってバルブ(焼玉はbulb、これはvalveで弁)は厄介物で
バルブの効率的な動きを追及しDOHCとかドゥカッティのデスモドロミックだとか複雑な仕組みが考えられましたが
バルブなんか要らないんじゃないかと考えた人が居たらしい。
ガソリンエンジンは燃料吸入、圧縮、爆発、排気の四行程(4ストローク)で二回転中、一回転は空転です。
バルブなしで吸入排気のできるデザインにしたものが2ストロークエンジンで
吸入排気を同時にするので空転がない。ピストンが上がるたび必ず爆発する。
このエンジンはシンプルで部品が少なく、しかも空転がないので小型でハイパワー。
しかし単純計算では四ストロークの倍の排気量で燃費は悪くなり
バルブがないので不完全燃焼のガスがどうしても排気に回ってしまいます。
2ストロークは斬新な発想のエンジンなのに途上国イメージがあるのは
四輪車では途上国中心に使われたかからでしょう。
日本でも軽自動車に2ストロークエンジンが多く使われた時代がありました。
小型のバイクはとくに2ストロークエンジンが多かった。
高性能ラジオを驚異的に小さくして町工場から世界企業になったのはソニーで
原付エンジンの4ストローク化に固執し世界企業になったのはホンダです。
モペットのスタンダードになったスーパーカブは五十ccエンジンで4ストロークというのがミソでした。
日本で最初にDOHCエンジンを積んだ市販車もスポーツカーではなくホンダの360cc軽トラックで
2ストとは逆に複雑高精度な機関で小型でハイパワーと低速トルクを出そうとしたのです。
二輪メーカーで2ストにこだわったのはヤマハで、ホンダのように二輪を実用として考えるのではなく
脱俗バカンスの趣味というコンセプトだったのでしょう。
RDのように四百ccの2ストがあった。ぼくは2ストの高回転のフィールと乾いた音が好きで乗っていました。
2ストではカワサキに七半(750)まであった怪物のようなマッハのシリーズが伝説的ですが
2ストのしゃれたバイクを作り続けたのはヤマハです。
ポンプにはピストンもバルブもないものがあり、とくに真空ポンプは回転するローターで気体を送るのですが
その逆にローターしかない超シンプルなエンジンを考えたのがロータリーエンジンです。
ピストンを持たない2ストエンジンで、2ストエンジンの長所と短所を持っています。
ボートの小型船外機といえば世界的にヤマハの独壇場でしたがそれも2ストで
そこにホンダが4スト船外機を出したらスーパーカブと同じように世界の大ヒットになった。
今では船外機も4ストが主流です。船外機も150馬力くらいまで有り、よくあの大きさに収まっているものだと感心する。
船外機の世界はホンダにしてもヤマハもトーハツもスズキも日本のメーカーの独壇場です。
2ストは環境に良くないということで今は原付バイクにしか使われません。
このごろは化石燃料を使うエンジンそのものが環境に良くないといわれ、電気自動車の時代が間近らしい。
しかしほんとうに電気のほうが効率がよいのでしょうか。
エンジンより電動モーターのほうが高効率なのは分かっています。
しかし電気ももとは化石燃料の火力で発生させるものが多く
それを車のエネルギーに積み替えるまでの道のりにずいぶんとロスしているはずだから
燃料を直接積んで走る車とどっちがどうなのか。
おかしなたとえかもしれないが、草や穀物を食べて育つ動物の肉を食べるより
人間が直接野菜や穀物を食べるほうが効率はよい。
ただし人間の食べられない草も食べてくれる家畜の肉ならその点は高効率です。
電気も火力のような化石燃料以外に原子力や風水力や地熱など何でも使えるという利点はあります。
ただし原子力や風水力、地熱発電などは建設コストが膨大なので
その償却を考えるとほんとうに高効率なのかと言う問題も出てくる。
以上はぼくのまったくの素人考えなのでどこか間違っているかもしれない。ご指摘願えれば幸いです。