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Konaさんくるまよもやま話

 

 14.車の音のことについて

 妻のノンはほんらいプロミュージシャンで娘も幼時からチェロとピアノをやっているのですが
それでというよりたぶん生まれつきで二人とも異様に耳がよい。
すこしでも音の悪い楽器やオーディオは気持ちが悪いといってすぐスイッチオフ
わたしには分からないほどの音程の狂いにすぐに反応し
プロのコンサートでも音のしっかりしていない演奏だと気持ちが悪いといって途中でも出てしまうくらい。
それくらいなので彼女らは一発で音を決める才能だけは凄いです。

わたしにそんな才はないが生理的に音に煩いのは共通で、以前は音の出る信号機がいやで
それがあるために日本には住みたくないと思うくらいでした。メロディーの鳴る信号機ですね。

日本の交通規制のシステムなど途上国なみと思っていましたし今も思っているのですが
警察の交通行政の貧困でしょう。
赤とんぼととおりゃんせのメロディーの信号機のばかばかしさをあらゆるところに訴えていたものですが
なんの反応がなかったのに広島でプチオリンピックのアジア大会があったときに
あっという間にそれが消えてピヨピヨ音に変ったのは幸いでした。
今も日本にはあのメロディーを鳴らす信号機のある都会がある。
東京にも場所によってはあるのでびっくりします。

 フランスの車は変てこだとむかしから言われますが
ここ二十年フレンチに乗っているわたしからすれば合理的でどこも変ではない。
クラクションが「ビビーッ」でなく「プワーン」という間の抜けたような音がすることを変っているという人も居ます。
「ビビーッ」の典型はドイツ車で、日本車もそれを真似ているのですが
要するにどんな騒音の中もどんな状況下でもかき消されない音質を研究したらそうなったという計算された音。

しかしその音は人をびっくりさせるし、びっくりさせることに意味があるのでしょうが
フランス人はいくらなんでも他人をびっくりさせるのは行儀が悪いと気を使うので「プワーーン」という音。
ひところに比べて今ではフランス車もグローバルなビビー音にすこし近くなっていますが。

 エンジンの話でユーロビートはエンジンの音である、というふうなことを書きましたが
ヨーロッパ人がエンジンの音が好きだからユーロビートも好きというより
むかしからユーロビートはあって、だからエンジンの音も好きなのだとも言えるのだと思う。

なぜそう思ったかと言うと、ここにアントニオ・ヴィヴァルディのチェロ協奏曲のCDがあるのですが
これがまたエンジンの音そのものだから。三百年前の曲ですからもちろんこの世にエンジンなどなかったころです
。なのにカムに乗ったエンジン音のような演奏。ヨーロッパ人の体内にもともとそういう音楽性があるので
エンジンが発明されるとその音を重視する嗜好があったのかもしれない。
メルセデスなどはハイクラスの車もエギゾーストは消音より良い音質に聞こえるように配慮されていたと思います。
日本車は独伊の車を模範にしたと思うが、エンジンの音には無関心で、抑えることしか考えなかった。

どうしてこんなことを書いたかと言うきっかけは、今日、日本では珍しいモトモリーニの大型バイクを見かけたから。
ドカッティのLツイン、モトグッチの横置きVツインに対して縦置きVツインですね。
見ても迫力だが縦置きVツインの音が良かった。
ドカッティの音のような迫力はなく、同じ縦置きVツインのハーレーとはもちろん違って
BMWの水平対向に似たブルブル音ですが、和菓子のような味わいがあります。

バイクは2ストの音がけっこう好きで、むかしヤマハの中型RDをカフェレーサーにして通勤用にしていたことがあります。
高回転まで回さないと走らない車なので回します。
甲高い音が凄いので家からすこし離れたところまで押して行って始動していました。
対照的にトルクフルな単気筒でモダンな音質のSRXと、デザインが好きでTY(トライアル)も持っていましたが
そのころヤマハのバイクはほかの三社と比べられないほどしゃれていた。

でもわたしの好きなエンジンの音は船舶用多気筒ディーゼルのアンサンブルの音です。
マティア・バザールのユーロビートもしくはアントニオ・ヴィヴァルディのような。
ヴィヴァルディはヴェネチアに生まれヴェネチアで活躍した人ですが
東方文化の影響のあるヴェネチアでヴィヴァルディのリズムにはオリエントな雰囲気がまるでないので
どうしてかと思うけれど、湿り気の多いヴェネチアの風土と時代の要請だったのかもしれない。

その後、ロマンチックな時代になるとヴィヴァルディは忘れられていたのです。
ロマンチックというのは弦楽器の演奏ならビブラートを聞かせて歌い上げるような
演歌で言えばこぶし。ヴォヴァルディの再評価はここ百年のことで
日本では四十年くらい前にイ・ムジチが「四季」をヒットさせてからでしょう。
ヴィヴァルディの時代と今は人間のリズム感に共通するものがあるのかもしれない。
今はドライでシュールな、ある意味哲学的な時代ですからね。
そんな時代にはそんな時代の自動車が要請されるのでしょう。エコだとか電気だとか以上のそれです。



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